昔、中野村に住む佐吉じいさんは、行方不明となったおばあさんの捜索で柳瀬川の篠崩れに潜(もぐ)り、川底でそのおばあさんらしき人を見つけた。そのおばあさんの髪の毛が、佐吉のふんどしの垂(た)れとは逆方向の川上になびくという異様な光景を目にした。が、おばあさんを助けねばと抱き上げようとしたがビクともせず、「お前は今後この川で漁をしてはならん。私がここにいる事を3年間誰にも話してはならんぞ。」と恐ろしい表情でつぶやいた。恐怖におののきながら佐吉は家に逃げ帰った。行方不明のおばあさんは、翌日上流の大和田(新座市)でみつかったが、気の抜けたその姿に人々は狐(きつね)に化(|ば)かされたに違いないと噂(うわさ)し合った。佐吉はその日以来、柳瀬川での漁をやめ、新河岸川のみで行っていたが、川底での約束の3年が過ぎた頃、事の顛末(てんまつ)を村人に語ったということであった。(柏町1丁目付近の伝説)

 篠崩れの怪      かつて柳瀬川の篠崩れがあったあたり